すべてが一体化していて、フタが開かない急須。手がけているのは、焼き物のまち、愛知県常滑市の人から人間国宝に推されるほどのすごい職人でした。
フタが開かないという不思議な急須の謎を探るため、取材班は愛知県半田市にある工房を訪ねました。
ロクロを回していたのは、小西洋平さん（７９）。この日もフタの開かない急須を作っていました。
「フタが開かない急須があるって聞いてやってきたんですが…」（記者）
「ただ面白いから挑戦しただけ。僕はやりたくてやっている。半年こんなことをやっていた。そしたら半年で２０２０個も作っていた」（小西洋平さん）
普段は普通の急須を作っているという小西さん。
今回はフタのない急須を半年かけて２０２０個作ったといいますが、一体何のために作ったのでしょうか？
工房の外に出てみると、工房まわりにはたくさんの急須が。
「ここにも急須がありますね」（記者）
「６５０個くらいある。同じ窯で焼いても土が違う。白い色しているけど、焼くとこういう色（青色）になる。マジック、僕の。だけどインテリア」（小西さん）
「急須はいくらですか？」（記者）
「３０００円」（小西さん）
花壇に花ではなく、捨ててあるかのような急須が約６００個、総額１８０万円分のインテリアだそうです。
そして、さらに敷地内を進むと、急須以外の小西さんの作品が。
「（小西さんの作品は）いくらですか？」（記者）
「買ってくれる人がおってだけど、２０～３０万」（小西さん）
さらに工房の中にも、フタのない急須だらけ。一体これをどうするのでしょうか？
「こういうふうに積むと“ピラミッドのオブジェ”」（小西さん）
フタの開かない急須。その目的は“ピラミッドのオブジェ”でした。
すでにミニチュアの試作品まで作っていました。
「この試作品はだいたい１００個だわ。これの２０倍。自分としては（高さ）３メートルぐらいにしたい。そういうモニュメント、オブジェができることが夢だわね」（小西さん）
スケールが大きすぎるのでは？と思われたこの夢。
しかし、愛知県常滑市で急須を扱う店「常滑焼急須館」で、驚くべきことを教えてくれました。
「小西洋平というと、同業他社みんなが一目置いている作家ですから。三代・山田常山（常滑出身・人間国宝）の次に、人間国宝になるのは小西さんだと思っている。常滑の誇りですよね」（常滑焼急須館 榊原加津典さん）
実は、小西さんは急須職人のすごい人。小西さんの作品は常滑市の無形文化財となっており、市の施設にはオブジェがあちらこちらと飾られています。
茶器の本場・中国をはじめ、韓国の博物館に依頼され展示。フランスでは展覧会にも出品し、賞をとっています。
そんな小西さんですが、新たな挑戦は大きすぎて展示する場所が決まっていません。今回のオブジェのこだわりは雨にぬれた時の美しさ。
「ごみではないよ。作品だからね。雨が降ると急須がみずみずしくなる、これも喜んどる。水を欲しがってる、本当はお茶だけどね。これが酒だといいよね、夢が広がるでしょ」（小西さん）
これまで自由に作品作りを続けて来た、小西さん。しかし、唯一、頭が上がらない人がいました。
「おっかぁ怒っているよ、バカじゃないの。誰もほしい人いないのに朝から一生懸命やって」（小西さん）
そう話す小西さん。奥さんの雅子さんの本音は。
「朝早く３時半ぐらいから起きてがんばっているんだけど、それを金もうけへエネルギーかけてくれたら、私もみんなもニッコニコだけど…」（妻・雅子さん）
雅子さんはそういいますが、夫婦になって５５年。小西さんの事を心の中では認めていました。
「焼き物が好きで、一生懸命うれしくてやっているから疲れないわね。やらせてほしいと言うので イヤだけどしょうがないと思って」（妻・雅子さん）
職人人生の集大成として、楽しいことを一生懸命やりたいという小西さん。
今年中にオブジェの完成を目指しています。
「人間国宝級」の急須職人が作るフタが開かない急須 なぜそんな急須を作る？ 偉大な夫に妻の本音は？
"職人" - Google ニュース
February 24, 2020 at 12:51PM
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