２０２０年も２カ月が過ぎ、早くもバズりそうな酒が頭角を現してきた。りんごの果汁を発酵させた醸造酒「シードル」がそれだ。
シードルってあの甘ったるくてシュワシュワしたやつでしょ？ そんなイメージを持つ御仁は少なくないだろう。
しかし、である。いま注目されているものは従来品とは一線を画す。りんごを原料としているのでほんのりとした甘みは感じるものの、口当たりはむしろ、サラッとしていてドライ。欧米のバールやパブで男たちが喉を潤しているようなタイプの一本がじわりじわりと盛り上がりを見せているのだ。
■降雹や台風被害で木から落ちてしまったりんごを使用
ブレークの兆しは数年前からあった。シードルの認知普及を目的とした「日本シードルマスター協会」が15年に発足して以降、新聞や女性誌などでたびたび取り上げられ、一昨年にはグルメ雑誌「ダンチュウ」が特集を組んだことで、グルマンや左党の間で注目を集めることとなった。
日本全国で生産者が増えていることも大きな要因だ。近年の異常気象による降雹や台風被害で収穫前のりんごが木から落ちて傷物となり、味は変わらずおいしいのに出荷できないものを“再利用”するというサスティナブルな要素も時代に合っている。小規模生産される個性豊かな「クラフトビール（地ビール）」が全国各地で盛んという背景も追い風となっている。
都内には国産のクラフトシードルを扱う飲食店も出てきた。その一軒で、ガレットとシードルの専門店をご夫婦で営む「フルール ド サラザン」（東京・浅草）では、シードル目当てに来店する男性客が珍しくないという。実際、記者が店を訪れた日も店名物のガレットとともに、カウンターでシードルを数種類楽しむ３０代のひとり男性客の姿が……。
オーナー店主である玉越幸雄さんいわく、「地ビールが市民権を得たいま、造り手の息遣いを感じる“クラフトシードル”を楽しむ方々が増えていることを実感します。昨今は健康に気を配る方々も多い中、シードルは、プリン体がほぼゼロ。これって、ビール好きの男性にとっては、ポイントが高いですよね（笑い）。欧米のバールやパブなどではお馴染みの“まずはシードル”といったスタイルが日本でも定着するといいなと思っています」。
シードル発祥であるフランスをはじめ、イギリス、スペイン、アメリカなどではシードル専用のりんごを生産し、醸造。いずれも生のまま食べるにはちょっと……という品種を複数ブレンドし、味わいのグラデーションや特徴を生み出すものが多い。
一方、国産のシードルは、食用りんごを使う場合が多く、シードル自体もフレッシュでみずみずしい。同じ品種のりんごでも、造る土地の土壌や気候、水、酵母、製法によって味わいも異なることを考えれば、製造までの物語に思いをはせるのもいいだろう。しかも、「店に来られる女性のお客様から、いろいろな種類のシードルをさり気なく男性から提案されると嬉しいという声がよく聞かれます」（前出の玉越さん）というではないか。
甘くない、健康的、カッコいい、でもって、モテる……。まさにいいこと尽くし！ 玉越夫妻に何から手を付けていいのか分からない初心者向けに、まずは押さえておきたい国産クラフトシードル「６銘柄」を教えてもらった。
■国産クラフトシードル厳選６銘柄
●テキカカシードル（もりやま園／青森・弘前）…自社で栽培するりんごの摘果時に捨てられてしまう未成熟りんご「摘果果（テキカカ）」を使用して醸造。酸味や渋みを活かした味わいが特徴。
●イングリッシュサイダー（ベアレン醸造所／岩手・盛岡）…年間３回、仕込みの時期ごとに異なるりんごを使用。甘味も酸味も軽やかなテイスト。ドイツの伝統製法にこだわったクラフトビールを醸造するブルワリー発。
●ファーマーズ クラフトサイダー（ファーム＆サイダリーカネシゲ／長野・下條）…フジ単一で造られた華やかな香りで、すっきりと喉越しがいい。目指すは、米国のハードサイダースタイル。
●増毛シードル（増毛フルーツワイナリー／北海道・増毛）…辛口タイプの００７３は、スターキングデリシャスなど４種類のリンゴをブレンドして醸造。9～１２月に収穫したりんごを2月まで追熟させ糖度UP、奥行きと深みがある。
●La 3e saisonラ・トロワジェーム・セゾン辛口（カモシカシードル醸造所／長野・伊那）…りんごは地元産と自家栽培のものをブレンド。初秋、中秋、晩秋と3回に分けてシードルを仕込む。国際的なシードル審査会「フジ・シードル・チャレンジ２０１７」で金賞（甘口）と銀賞（辛口）を受賞。特に辛口はエレガントな味わい。
●常陸野シードル（木内酒造／茨城・那珂）…クラフトビールや清酒「菊盛」などを手掛ける蔵元が生産。ホップを使用したゴクゴク飲めるビールテイスト。ボトルもラベルも茶目っ気たっぷりで、さながら瓶ビールのよう。
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February 24, 2020 at 07:26AM
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ビールに続き…2020年に“バズる”酒「国産クラフトシードル」厳選6銘柄（日刊ゲンダイDIGITAL） - Yahoo!ニュース
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