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Friday, March 13, 2020

パンク文脈から登場した職人グループ、ポリスの衝撃的なデビューアルバム『アウトランドス・ダムール』 - OKMusic

1978年にポリスがデビューした時、多くのロックファンは新しいパンクグループだと勘違いした。いや、勘違いさせられたのだ。ポリスの3人は豊富な音楽経験を持っているにもかかわらず、確信犯的にパンクやニューウェイブっぽい雰囲気を醸し出してロック界に新風を巻き起こした。彼らが活動した5年間にリリースしたアルバムは5枚。どれもロック史に残る傑作群だが、個人的にはデビュー時の衝撃が大きいので、今回は『アウトランドス・ダムール』を取り上げる。

1976年11月、マニアックなプログレグループとして知られるカーヴド・エアのメンバーであったスチュワート・コープランドは、イギリス北東部にあるジャズクラブでたまたまスティングの演奏を観て気に入り、「ロンドンに来ることがあればセッションしよう」と連絡先を交換する。翌年初め、スティングは本業の教職を辞めてロンドンに移り、それを機にコープランドと再会すると、彼はすでにカーヴド・エアを脱退していた。コープランドがロンドンパンクのライヴシーンに参入したい考えをスティングに持ち掛けたことから、バンド結成が決まる。ギターにはフランス人でパンクへの造詣が深いヘンリー・パドヴァーニがコープランドの要請により参加する。このメンバーで「Fall Out/Nothing Achieving」のシングルをリリースしている。このシングルはまぁまぁパンキッシュなサウンドに仕上がっているが、あまり個性は感じられない。

ポリスと併行して、スティングは元ゴングのマイク・ハウレットの依頼で参加したストロンチウム90にドラマーが不在だったことから、コープランドに声を掛ける。また、ハウレットはギターにハイレベルの技術を持った英ロック界の重鎮アンディ・サマーズを呼び寄せていた。そもそもストロンチウム90はゴングのリユニオン・コンサートのための短期ユニットであったから、そのコンサートが終わるとスティングはサマーズにポリスへの加入を要請する。

ゴングのリユニオン・コンサートでは、マイク・ハウレット(ヴォーカル&ベース)、スティング(ベース、ギター、ヴォーカル)、アンディ・サマーズ(ギター)、スチュワート・コープランド(ドラムス、パーカッション)のメンバーで出演、この時の演奏と直前のスタジオ録音は『ストロンチウム90:ポリス・アカデミー』(‘97)のタイトルでCD化されている。興味深いのは、このアルバムにはすでに「マジック(原題:Every Little Thing She Does Is Magic)」(4thアルバム『ゴースト・イン・ザ・マシーン』収録)が登場していることだろう。ただ、この曲に関してはバンドの演奏ではなく、スティングひとり(ギターとヴォーカル)によるデモである。

『ストロンチウム90:ポリス・アカデミー』がリリースされた時、この作品こそがポリス結成のきっかけとなったと言われていたのだが、それは間違い。あくまでもストロンチウム90は短期のユニットであり、ポリスは別にパーマネントグループとして活動していたからである。スティングはポリスのギタリストのヘンリー・パドヴァーニの技術に難色を示しており、ストロンチウム90のセッションのおかげで、アンディ・サマーズという類い稀な才能と知り合えたからこそ、ポリスがデビューにこぎつけたのは確かである。

結局、サマーズはスティングに請われてポリスに加入する。パドヴァーニは、その1カ月後にコープランドから脱退するよう説得され、やむなく受け入れている。この両者の関係が当時どうだったのかは分からないが、2007年にリリースされたパドヴァーニのソロアルバムにはスティングとコープランドが参加し、同年のポリスのリユニオンツアー最終日にはアンコールでパドヴァーニの名前が呼ばれ「Next To You」を一緒に演奏しているぐらいなので、現在はそう悪くはないようだ。

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