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Thursday, March 5, 2020

「クラフト」と呼ばないサッポロの戦略 クラフトビールは日本のモノ作りを変えるのか④(サッポロビール・前編) - WEDGE Infinity

Wedge REPORT

2020年3月6日

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永井隆 ((ながい・たかし))

ジャーナリスト

1958年群馬県桐生市生まれ。明治大学卒業後、東京タイムズ記者を経て、1992年にジャーナリストとして独立。雑誌や新聞、ウェブで精力的に執筆する。著書に『移民解禁 受け入れ成功企業に学ぶ 外国人材活用の鉄則』『EVウォーズ』『アサヒビール30年目の逆襲』『サントリー対キリン』など。

[執筆記事]

 自社開発したホップが世界のクラフトビール醸造家から高い支持を得ているサッポロビール。買収した米クラフトビール社製品の国内販売も、3月から開始した。しかし、「クラフトビール」という看板を、一度は下げている。大麦やホップの育種まで手掛けるサッポロは、果たして何を狙っているのか。

(AlexRaths / gettyimages)

札幌?空知?

「ソラチエースは素晴らしい。僕は大好きだ」

「そうか…。ありがとう」

「クラフトビールにマッチする個性的なホップだ。ギャレット・オリバーが認めて採用しただけのことはある。そもそも、大麦やホップなどの原材料まで開発するビール会社なんて、世界でサッポロぐらいではないか。凄いよ」

「うん…」

 2013年秋、新学期がスタートしたミュンヘン工科大学のキャンパス。サッポロビールのエンジニアで、留学を始めたばかりの新井健司は「ソラチエース」について何度となく話しかけられていた。アメリカからの留学生からは、英語で。ドイツ人学生や研究者からは、ドイツ語で。

 最初は「みんなサッポロとソラチとを、きっと混同している。札幌も空知も北海道の地名だから」と、勝手に解釈していた。

 しかし、どうも違う。クラフトビールの伝説的な醸造家であるブルックリン・ブルワリーのギャレット・オリバーといった固有名詞が出てくるくらいだから。

 そこで、日本で所属していた研究部門にメールで問い合わせたところ、ソラチエースとはサッポロが開発したホップであることが、ようやく分かった。サッポロの社内でも誰もが知る存在ではないホップの名を、醸造を学ぶため世界からミュンヘンに集まった研究者や学生の多くが、知っていたのだ。しかも、素直に評価してくれている。

「こんなことって、あるのか」

 もはや驚くしかなかった。

 川崎市出身の新井は、東京大学農学部を卒業し同大学院で酵素学を修めて2007年に入社する。研究所や工場の醸造技術を歩み入社7年目の13年秋から、ミュンヘン工大に留学する。期間は一年間、醸造を学び、ヨーロッパのビール事情に精通する目的で会社から派遣されたのだ。

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