北国銀和倉支店で作品展示
七尾市田鶴浜地域に伝わる伝統技術を使った「田鶴浜建具」職人で、厚生労働省のものづくりマイスターに認定されている鯨波(くじらなみ)茂さん(70)=同市田鶴浜町=が、くぎを使わず細かい木材を組み込む「組子細工」で動植物を表現した作品を制作した。鯨波さんとして初めて色も付けた作品。多くの人に組子細工の魅力を知ってほしいと北国銀行和倉支店(同市・和倉温泉)ロビーで二十三日まで展示している。 (室木泰彦)
今回展示しているのは五点で、いずれも幅六十センチ、高さ五十センチほどの長方形作品。鳥の群れが海辺を飛び立つ姿を描いた「波千鳥」や大きな一匹がインパクトある「渡りカニ」のほか、カレイ、ニワトリ、赤い花の観葉植物として知られるアンスリウム。組子細工特有の幾何学的な模様に動植物の姿が浮かび上がり、筆を使う絵画とは違った趣がある。
作品はいずれも長さ三センチほどの正三角形が基本の枠で、そのすき間にさらに細かく加工した木材をピンセットなどを使って組み込んでいく緻密な作業が必要。通常の仕事の合間を利用して四年がかりで五点を仕上げたという。アンスリウムは花や葉の形が繊細で、その雰囲気を表現するのが難しかったといい、鯨波さんとして初めて赤と緑色を塗り優雅な姿を再現した。
材料の木は秋田杉や神代(じんだい)杉、サクラ、ヒノキの四種を利用。鯨波さんは「着色することで組子細工の作品のバリエーションが増やせる。魅力がより伝わるように今後も工夫した作品作りに取り組んでいきたい」と意欲を見せた。
一方、生活様式の変化などで伝統技術を生かした建具の需要は全国的に減少。鯨波さんによると、田鶴浜建具もピーク時は六十七事業所あったが、現在は十一に減った。田鶴浜建具工業協同組合も二〇一六年五月で解散。組合があった時は専用スペースで自身の作品も常設展示できたが、今はそうした自由スペースがないためPRの機会確保も課題。今回は客として同支店を利用した際にロビーで展示できると知り、支店に希望し実現した。
田鶴浜建具の同マイスター五人の一人、鯨波さんの作品は、金沢駅の金沢百番街「あんと」案内カウンターの壁の一部に使用。観光客らにアピールする一例だが、こうした情報発信強化は喫緊の課題。組合理事長なども歴任した鯨波さんは「少しでも多くの人が目にする機会を今後も増やしていきたい」と話す。
田鶴浜建具と組子細工 1650年ごろ、田鶴浜地域を治めた領主長連頼(ちょう・つらより)が父を弔うため東嶺(とうれい)寺を再建。戸障子や欄間などの製作に愛知県から木工職人2人を招いた。技術が優れていたため、地元住民が競って弟子入り、精巧な細工の建具が盛んになった。細かく加工した木をくぎを使わず組み込む「組子」が特徴。応用した組子細工が装飾、土産品などで活用される。伝統と知名度が評価され経済産業省の地域ブランド「地域団体商標」を獲得。技の継承と効果的なPRが課題とされる。
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