今夏、醸造所を併設したクラフトビール店をオープンする。場所は、大洗町の大洗サンビーチ近くの複合施設「大洗シーサイドステーション」一階。店名の「Beach culture brewing」は、海が見えるロケーションにちなんで名付けた。
十七日、サンビーチで開かれたイベントでは、県特産の干し芋で風味を付けたホワイトエールや、大洗のわき水を使ったゴールデンエールを提供した。地域色を前面に打ち出したビールで勝負するつもりだ。
潮来市出身。鹿嶋市内の高校を卒業後、県内の金属工場などを渡り歩いた。よく言えば好奇心旺盛、悪く言えば飽きっぽい性格でもあった。
転機は八年前に訪れた。ものづくりの仕事を模索する中、日本酒の杜氏(とうじ)に興味を持った。さまざまな酒を調べた末に行き着いたのが、クラフトビールだった。香りの良さで知られるドイツビール「ヴァイツェン」を試しに飲んでみると、国内の大手ビール会社の商品とは風味が全く違った。
酒とは、ただ酔わせてくれるものだと思っていた。ビールは苦くて苦手。そんな先入観をヴァイツェンは覆した。しかも、同じヴァイツェンでも醸造場が違えば味も違う。ドイツビールの多種多様さは、人間社会そのものに感じられた。
インターネットで調べたところ、農家直営の醸造所が鹿嶋市にできると知る。無事採用されたが、店が醸造免許を取得するまでに二年かかった。東京・銀座の醸造所で一、二週間ほど修業した後、ようやくビール造りに没頭できた。
ビールの製造自体は難しくないものの、安定した品質を保ち、商品として送り出すのは容易ではない。原料のビール酵母は、暑い時期にはうまく働いてくれず、仕上がりも荒くなる。扱いは厄介だが、これも人間らしくて面白かった。
「もっと自由にビールが造りたい」と三年前に独立を決意。開業資金を稼ごうと、大型トレーラーの運転手になった。しかし、毎日午前二時に出勤する激務。心の余裕はだんだんと失われ、何度もビール造りの夢をあきらめかけた。
それでも、熱意が消えなかったのはビールはもちろん、酒場の雰囲気が好きだからだ。地ビールとも呼ばれるクラフトビールは地域に根ざしてこそ花開く。職種も性別も違う住民がジョッキを傾ける光景を自分の店で実現したかった。
大洗町での開業を後押ししたのは、観光資源が豊富な同町とひたちなか市の一体化を目指す県の「ひたちなか大洗リゾート構想」の存在だ。昔からサーフィンで訪れていた大洗は潜在的な魅力に満ちている。「この場所を多くの人に知ってもらう起爆剤になりたい」 (保坂千裕)
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