リディアワークス代表取締役・小林史人
熟練技術者が必要な仕事は、当然なくならない。一方、技術がなくても、きれいに仕上がるような建材が開発されている。壁紙がシステムパネルなどで簡単に設置できるようになった。当社の開発商品である布看板「ルーファス」も、店舗スタッフがカーテンのように簡単に交換できる。これに伴い、建設現場では女性の姿をよく見かけるようになった。外国人も現場で活躍している。少子高齢化により職人は高齢化し、現場では人手不足が課題だが、技術開発がそれを補う構図となっている。
筆者は20代前半から看板業界で10年近く働き、年500件ほどの現場施工を経験してきた。看板の現場施工は時間や場所を選ばず、オープン前や昼間、百貨店の閉店後、終電後の駅広告、季節の催事装飾など1年を通して常に何かしらある。体は一つなので、受ける仕事を技術レベルごとに5段階に分け、現場スタッフと相談しながらシフトを組んで運用した。
技術に自信がないスタッフには、事前に現場のシミュレーションをつくり、問題点をなくしてから臨んだ。その結果、トラブルが少なく、安心して任せられる業者として信頼を得て、受注を伸ばした。しかし、若いスタッフの定着が進まず、10年ほど経過した頃をピークに現場施工は減少していった。他の業者の参入や職人の独立により平均受注単価が下がり、利益率も悪化し始めた。
そこで実行したのが、印刷需要の取り込みだ。写真の各種プリント・現像を行うプロラボサービスを経験しているスタッフが筆者を含め複数在籍していたことから、色の再現性や色彩豊かな発色にこだわった。色の調整は非常に難しく、印刷機によってもバラつきがあったことから手間がかかる仕事だった。その業務を担い、現場まで納めることで「現場+α(アルファ)」を付加価値として提供し、単価アップや利益率の増加につなげた。
さらに上乗せした付加価値として、機能性フィルムのプリントをスタートした。ガラスを設置する際には、ガラスが割れたときに備えて飛散防止フィルムを貼ることが建築内装で推奨されている。ガラスの装飾としてのプリント需要もあった。ガラスフィルムの印刷には技術が必要で、施工できる業者も限られていたことから徐々に売り上げは伸びていった。
美術館や店舗、商業施設に採用され、現場施工まで一気通貫で受注できた。地方案件では印刷だけの受注も取れるようになった。印刷売り上げが増え、現場施工の受注が減った分を大きく超えた。
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【プロフィル】小林史人
こばやし・ふみと 本所高卒。山崎組、京王運輸、プロラボを経て2003年に家業のコバヤシ看板入社。10年リディアワークスを設立。誰でも上手に張れて環境にも優しい布看板「ルーファス」を開発し2019グッドデザイン賞ベスト100、2020年はばたく中小企業300社(経産省)選定。20年には除菌フィルム「キルウイルス」を開発し販売会社ウイルスケア設立。42歳。東京都出身。
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