静岡放送(SBS)
静岡の伝統工芸、挽物。木工用のろくろを使い木をくりぬいて作品を作ります。流れるような美しい形となめらかな表面が特徴です。この道18年の挽物職人、百瀬聡文さんです。 <桝永元気記者>「先ほどは厚みがありましたけど、挽物の技術で削るとこんなに薄くなるんですね。木目の色合いもしっかり出ていて。こちらが逸品ですか?」 <挽物所639 百瀬聡文さん>「そちらではなくこちらです。国産ヒノキを静岡のお茶で染めたものになります」 今回の逸品は挽物が静岡のお茶と出会って生まれた茶染めの挽物です。木の温かみを残し木目が映える上品な作品です。奥深い黒色の器に食べ物を入れると色が鮮やかに浮き上がります。染めているのは静岡の伝統工芸、駿河和染の職人です。老舗染物店の五代目、鷲巣恭一郎さんは駿河和染めと静岡茶を組み合わせた茶染めの第一人者です。 <お茶染めWashizu. 鷲巣恭一郎さん>「静岡の基幹産業である茶業。製造工程で出る廃棄される部分に価値をつけていく」 お茶の成分を出すため、静岡茶を煮出していきます。煮出したものに挽物を一晩から二晩漬けこみ、お茶のタンニンなどの成分を浸透させます。続いて、鉄分を溶かした液を入れます。鉄分とお茶の成分が反応し、奥深い黒色に染め上げることができます。木を綺麗な色に染め上げるには、お茶の温度や鉄の配合、気温や湿度などを気にかける必要があり、試行錯誤を繰り返しました。 <お茶染めWashizu. 鷲巣恭一郎さん>「2年くらいかかった。その間彼(百瀬さん)は何度も割れたりゆがんだりというのを我慢してずっと付き合ってくれたので今がある。あきらめていたら木のお茶染めは今なかったかもしれない。完成品を見ると感慨深い」 <挽物所639 百瀬聡文さん>「つらかったがきれいに仕上がってくるとすごく良いものだと思う。お客さんに届いたときに喜んでもらえれば苦労は無駄ではなかった」 挽物の新たな魅力を引き出し、手に取った人に幸せと感動を届けたいという百瀬さんの熱い思いに鷲巣さんが答える形で完成しました。静岡の職人が手を組んだことで生まれた茶染めの挽物。多くの人に静岡の伝統工芸の魅力と職人の心意気を感じてほしい逸品です。
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