土木建築業界は、コロナ禍でも若手人材の確保が難しく、職人の高齢化や人手不足倒産が経営課題に挙がっています。そんななか、東京都文京区の原田左官工業所では、3代目の原田宗亮さん(46)が、スポーツ界で採り入れられている人材育成システムや女性職人の活用、働きやすい環境づくりに取り組んだ結果、若手の離職がほぼゼロになりました。
「うちは普通の左官屋とは違うな」
原田左官工業所は、1949年に原田さんの祖父が創業しました。先代の長男として生まれた原田さんは、「父から『継いでほしい』と言われたことはありませんでしたが、いつか継がなければいけないだろうと漠然と思っていました」といいます。 父は1989年から業界に先駆けて女性職人の採用を始めました。 「事務スタッフとして採用した女性が、『私も現場に出てみたい』と言ったのがきっかけです。当時、バブルで忙しい時代だったので、掃除などを手伝ってくれる人がいるだけで助かるという状況もありました」。1990年に女性左官チーム「原田左官レディース」を結成したのを機に、多くのメディアに取り上げられるようになります。 「中学生のころから、『うちは普通の左官屋とは違うな』と感じていました。左官の修行をして継ぐことも考えましたが、今までと同じやり方では会社を発展させることはできないだろうと。家業とは違う世界を経験した方が、将来継ぐときに役に立つのではないかと考えて進路を決めました」。高校卒業後は4年制大学の経済学部に進学。大学卒業後、携帯電話の部品メーカーで3年間営業職を務めたのち、2000年に同社に入社しました。
スポーツ界の「モデリング」、人材育成に応用
2007年に3代目社長に就任。当時、若手が入社してもすぐに辞めてしまうことが課題でした。原田さんは、若手が定着しない原因が既存の教育方法にあるのではと考え、ベテラン職人の塗り姿を真似して覚える「モデリング」と呼ばれる人材育成システムを採用しました。「モデリング」は、もともと野球やゴルフなどのスポーツ界で用いられている育成方法です。原田さんは、これを左官職人に応用しました。 「左官職人の世界は『見て覚える』のが基本で、長い下積み期間を乗り越えてこそ一人前という考えがありました。昔の見習いの仕事は、掃除や材料の運搬など下働きばかり。仕事の手順も知らないまま、先輩に『あれ持ってこい』と言われても、何をしたらいいのかわからなくて、やる気があっても挫折する人が多かった。そこで、まずは『塗り』から“左官の入り口”を掴んでもらう仕組みをつくりました」 まず、一流の職人が塗る姿を撮影した動画を見て真似をします。本人の塗り姿も撮影し、違いを修正しながら、繰り返し練習します。ベニヤ板1枚分の練習台に土を塗り、それを剥がす作業を1時間に20回できるまで訓練します。一流の「型」を真似ることで、「効率的に基本の塗り方をマスターできる」といいます。
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