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Saturday, November 27, 2021

鍛冶職人の道、養成塾1期生3人が卒業 デジタルにあらがう若者たち - 毎日新聞 - 毎日新聞

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修了式に臨む(前列左2人目から)藤田さん、山本さん、岡田さん=高知県香美市の「鍛冶屋創生塾」で2021年10月29日午前10時18分、井上大作撮影 拡大
修了式に臨む(前列左2人目から)藤田さん、山本さん、岡田さん=高知県香美市の「鍛冶屋創生塾」で2021年10月29日午前10時18分、井上大作撮影

 デジタルがもてはやされる時代への疑問が取材の出発点だった。出勤はしなくていい、人と会うのもオンライン、飲み会なんてもちろんご法度――。コロナがもたらした、そんな時代へのアンチテーゼ(反対の主張)でもあった。10月末、高知県香美市の「鍛冶屋創生塾」で最初の卒業生が誕生した。400年以上の歴史を誇る「土佐打刃物」の後継者を養成する機関には全国から応募があった。修了式に臨んだ1期生3人の作業着はぼろぼろ。野武士のようなひげ面の者もいて、入塾当初のピカピカした雰囲気はない。それでも全員が生き生きとしていた。

 創生塾は2年前に開塾。背景には、業界が直面する後継者不足があった。行政の支援も受け、高知県土佐刃物連合協同組合は全国的にも珍しい「学校方式」の養成機関を作る。専用施設を整備し、一般公募した研修生が複数の親方(講師)から2年間、技術を学ぶ。暑くて、きつくて、危険な現場。今どきの若者が手を挙げるのだろうか。そんな心配は及ばなかった。定員3人に対し、1期生に10人、2期生にも8人の応募があった。

修了証書を受け取る研修生=2021年10月29日午前9時53分、井上大作撮影 拡大
修了証書を受け取る研修生=2021年10月29日午前9時53分、井上大作撮影

 1期生の藤田将尋さん(26)は神奈川県出身。東京農大で林業を学び、土木会社で働いた経験も。鍛冶職人になりたいと各地を歩き、創生塾を知った。「面接試験で初めて四国に足を踏み入れた。天職を持ちたいと必死に技術を磨いた2年間だった。もう終わってしまうのか、という気持ちです」と振り返る。研修中は給付金が支給され、刃物店でのアルバイトと合わせて自活してきた。修了後は高知県南国市の事業所で働いており、「高知が大好きになった。ここで学んだことを高知に返したい。『鍛冶屋は一生勉強』という言葉の通り、頑張りたい」と決意を語る。

 岡田勘太さん(22)=高知県佐川町出身=は、高知工業高校で鍛造に魅了された。しかし求人がなく、高知県外の工場勤務を経てUターンした。「高校生の頃から鍛冶屋になりたかった。高知に帰って来た日に募集を知り、まさに運命的。次の日にはここに(応募に)来ていた。自分の好きなことを仕事にできる。この2年間は人生で一番短かった」と目を輝かせる。講師の言葉を書き取ったノートは4冊になった。

作業場で話し合う研修生ら=高知県香美市の「鍛冶屋創生塾」で2021年5月10日午前10時41分、井上大作撮影 拡大
作業場で話し合う研修生ら=高知県香美市の「鍛冶屋創生塾」で2021年5月10日午前10時41分、井上大作撮影

 1期生の兄貴分、山本良介さん(29)=高知県香南市出身=はひげを生やし、すっかり職人の顔つきだ。講師助手として創生塾に残り、後輩を指導する。「講師、助手の方がいたから何とか乗り越えることができた。(鍛冶屋は)自分で悩み、答えを出していくことの連続。将来は独立したいが、それまでの間、教えることも勉強」と未来を見据える。

 3人は、周りが驚くほどの熱意を持ち続けた。誰よりも早く出勤し、講師にはメモ帳を手に質問。どこへ行くにも自炊した弁当を持参した。若者の誠実な姿に応援したくなるのだろう。事務局は研修生の誕生日にケーキを振る舞い、年長の講師は「想像できないほど優しく、手取り足取り教えてくれた」(山本さん)。来賓として修了式に参加した香美市の法光院晶一市長は「大きく成長した皆さんは香美市の希望。鍛冶の火を消さないでほしい」と語りかけた。

 研修生を支えた門田貴司・事務局長も同時に“卒業”した。地元の商工会出身で、創生塾の設立時から尽力してきた。感想を聞くと、「3人は本当によく頑張り、無事に卒業してくれた。でもここがスタート地点。立派な職人に育ってほしい」と言葉を贈った。研修の場を用意した組合、資金面で援助した行政、そして我が子を教えるようにサポートした師匠や事務局。一つでも欠けたら卒業生を送り出せなかった。

 伝統的な刃物はデジタル技術で作れない。土佐打刃物は細かなニーズに応じ、職人が刃物の形状を自由に変える。熱い鉄をハンマーでたたき、手を使って1本ずつ研いで完成させていく。なぜこんなにつらい仕事を選ぶのか。その質問に研修生たちは同じ回答を聞かせてくれた。「自分の手でものを作りたい」。日々努力を重ね、助けあい、先人の技を継いでいく。人と技術、そして人と人がつながる、もの作りの現場がそこに広がっていた。【井上大作】

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