廃プラスチックを使ってアート作品を制作している刃物研磨職人がいる。足立区一ツ家の渡辺勇夫(いさお)さん(69)。プラスチックによる環境汚染に関心を持ってもらおうと、二年半で二十点を制作。「ひとりひとりが関心を持てば、きっと環境は改善するはず」と訴える。(西川正志)
夜を表現した黒色を背景に、月に照らされた冠雪の富士山が浮かび上がる。力作「月に光る富士」(横百十センチ、縦九十センチ)だ。数ミリに細断した廃プラを接着剤でベニヤ板に幾重にも貼り付け、絵柄に合わせて立体感を出す。アクリル絵の具で彩色し、迫力ある山体を表現した。
四十年来、プラスチックや木材などを裁断する刃物の研磨を手がけている渡辺さんが、作品作りを始めたのは二〇一九年春。プラスチックごみが深刻な海洋汚染を引き起こしているというニュースに衝撃を受けた。
プラスチック製品の製造現場では、自身の研磨した刃物でプラスチック素材が裁断され、廃材が生まれる。「少しでも多くの人に問題を知ってほしい」。幼いころから趣味にしてきた絵画の腕を生かし、廃プラを使ったアート作品で問題提起することを思いついた。取引先の業者も廃プラの提供を快諾してくれた。
二カ月かけて葛飾北斎の浮世絵「神奈川沖浪裏」を模した作品を作り、この年の夏にあった足立区主催の地球環境フェアに出展。凹凸のある独特の作品に多くの来場者が足を止めた。今年二月には、国立新美術館であった美術団体「新槐樹社」の公募展に「月に光る富士」を出品して入選した。
現在、来年の同公募展に向け、海と山をテーマにした大作に取り組んでいる。渡辺さんは「作品を見た人が、ポイ捨てをしないなど小さな行動を意識してくれれば」と願う。
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