繊細な和食にも合う味わいを追求する三好さん=大岡敦撮影
京都市中心部に立つ白壁の酒蔵。ひんやりとした内部に入ると、銀色に光り輝くタンクが所狭しと並べられている。天明元年(1781年)創業の酒造会社、キンシ正宗(京都市)が1997年に始めた、和食に合うビール造りを追求するビール工場「京都町家麦酒醸造所」だ。
参入した当時から続くロングセラーの銘柄が「京都町家麦酒 かるおす」。一口含むと、爽やかなホップの香りが漂い、後から優しい苦みが鼻に抜ける。多くのクラフトビールのような濃くてインパクトの強い味わいではないが、繊細で上品なのどごしが楽しめる。銘柄名の通り、京都弁で「軽い」を表す「かるおす」と言いたくなる。
「特徴が無いのが特徴。白身魚や豆腐など淡泊な和食と一緒に楽しんでもらいたい」。工場長の三好ちづ子さん(46)は思いを語る。その味を実現するのが苦みと甘みの独自のバランスだ。ふんだんにホップを使い大手ビールメーカーの主要銘柄より少し苦みを出し、一方で麦汁の糖分を多めにして打ち消す。使用する井戸水の甘みも加わり、繊細さに奥深さもあるまろやかな味を実現している。
仕込み、発酵、瓶詰めなど約2週間の工程で、最も神経を使うのが1次発酵だ。麦芽やホップなどビールの原料をタンクで煮る仕込みが終わると、アルコールと炭酸ガスを生じさせる発酵に移る。ある程度進んだ1次発酵の段階で、思い通りの味になっているか実際に飲んでチェックする。
酵母が混ざったドロッとした麦汁を口に含むと、果実のような発酵の香りがする。奥にあるホップと大麦の香りを嗅ぎ分け、いつもの味ができているか自らの味覚・嗅覚で確かめるのだ。原料を同じ量だけ使っても、温度変化の違いなどでわずかな差が生まれる。「1次発酵が味を修正するラストチャンス」(三好さん)で、原料を追加で投入するかなどを最終判断する。
味を一定にするため、大手ビールメーカーは大規模な設備で品質を管理する。三好さんは1トンのタンク10基と設備が限られるなか、20年以上のビール造りの経験と感覚を頼りとする。「機械の数値に表れないようなホップや大麦の微妙なバランスまで人間が確認したい」。妥協のない姿勢で、長年変わらない繊細な味を追求する。
キンシ正宗に新卒で入社した三好さん。もともとビール造りの知識はなく、最初の研修期間以外はほぼ1人でビール造りを手掛けてきた。京都の夏の暑さによってタンク内のビールが冷えにくく苦労するなど、試行錯誤の時期もあった。蔵の温度管理からタンクの清掃まで、数百の工程で改善を重ねた。
2019年春には醸造ノウハウを受け継ぐ男性社員が入社した。まだ19歳の未成年でビールを飲んで味のチェックはできない。「香りの判別だけでもビール造りはできる。若い彼がどんなビール職人に育つか楽しみ」と三好さん。人材育成という新たな挑戦が始まっている。(栗原健太)
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July 06, 2020 at 12:01AM
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優しい苦み 鼻が知る キンシ正宗のクラフトビール - 日本経済新聞
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