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Wednesday, August 5, 2020

「まだ0.1ミリ太い」 バット職人、選手支える探究心 - 朝日新聞デジタル

 ろくろに取り付けられた木製バットが高速回転し出すと、職人が小刀のような金属製の工具を押し当てた。舞い上がる木くず。バットがより、バットらしい曲線を帯びていく――。

 野球用品の製造会社「ゼットクリエイト」(本社・大阪市)が福井県越前市に抱える武生(たけふ)工場は、国内有数のバットの製造工場だ。年間約1万5千本の木製バットを作り、スポーツ用品店や大学野球選手用などに供給する。約80人のプロ野球選手向けのオーダーメイドのバットも手がける。

 「まだ0・1ミリ太いな」。山崎博史さん(40)はそうつぶやいた。同工場で2人しかいないバット職人の一人。現在工場では、バットは機械で自動的に削り出すが、その手本となるバットの型や、機械ではできない形状の削りがあれば、職人の出番となる。

 そこで求められるのは、ミクロなレベルでの調整。選手のパフォーマンスに大きく影響するため、妥協はできない。様々な刃の形の工具を使い分けながら手を加える。

 ただ、この技術の習得は並大抵ではない。元高校球児で、同県あわら市出身の山崎さんは、工場に23歳で入ったが、師匠の後ろに立ち、目で技術を盗む修業の日々だった。丸材を機械で切るなどの下処理から始め、木目のどこがグリップ部分にふさわしいかを見極めるまでに3年かかった。

 機械の切削で計約10年の経験を積み、手の削りの修業ができたのは6年前。工具をうまく扱えず、手が血だらけになることもあったが、気が付けば目視で0・1ミリの差がわかるほど感覚が研ぎ澄まされた。2年前、プロ野球選手用バット型の作製を任された。

 そのプロ野球選手のオーダーメイドでは、選手本人が工場を訪れ、細かな指示を職人に直接行う。選手にバットを振ってもらい、「感触が違う」と言われれば目の前で削る。求められる精度は0・1ミリ。振っては削り、削っては振りを繰り返し、選手とバットに向き合う。

 工場には、巨人・小林誠司選手や西武・源田壮亮選手など、有名選手のバット型がずらりと並んでいた。山崎さんが手がけた中で印象に残ったのは、昨季のパ・リーグ首位打者、西武・森友哉選手のバット。遠心力を使った打撃を生かすため、先の方を太くした。選手の体形やプレーの特徴を熟知し、それをバットに反映させるのも職人の技だ。

 シーズン中は自分が手がけたバットが使われるチームの試合を見るため、テレビの野球中継に釘付けになる。自分のバットで本塁打を打った瞬間が「たまらない」一方、打撃でバットが折れた時は頭を抱えるという。大体は当たりどころが悪かったからだが、「バット作りに生かそう」と折れた瞬間のスローモーション映像を注視するそうだ。

 バットを巡っては、最近では海外製を使う選手も徐々に増えてきた。ただ山崎さんは、精密な作りの日本の木製バットへの需要はなくならないと考える。

 「師匠たちからもらった大切な技術を次の世代につなげていきたい」。いつか弟子が入ってくる日を想像しながら、若手職人は黙々と技術を磨き続ける。(大西明梨)

     ◇

 ゼットクリエイト武生工場 福井県越前市池ノ上町93の7の3。スポーツ用品の製造や販売などを手がける「ゼット」(本社・大阪市)の製造部門が独立した子会社で、大阪と福井にそれぞれ生産工場を構える。武生工場では、しなりがある材質が特徴のメープルという木材などから野球用のバットを作るほか、ユニホームも製造している。

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