ぼくなら心が折れていただろうな…。

想像するだけで絶望的な気持ちになった。

ソフトバンク長谷川勇也外野手(35)が、新型コロナウイルスの陽性判定から約2カ月を経て、1軍の戦線に帰ってきた。8月1日の陽性判定から、当初は2週間程度の自宅待機を終えて練習復帰すると思われていた。だが「PCR検査で2度続けて陰性が出る」ことを復帰条件としていたため、実際の復帰は9月4日までずれ込んだ。

長谷川は9月末に1軍復帰した際、こう振り返った。「毎日、検査して。毎日、陽性と言われたので。途中、マヒしちゃってるというか…。陰性と言われたときに、どっちが陰性でどっちが陽性か分からなくなるぐらい。それぐらい日常的に、陽性っていう判定が毎日あったので。ストレスを通り越して慣れちゃったところもありました」。自宅で体を動かしながらそんな日々を過ごし続けていたと言うが、1カ月以上もグラウンドから離れた不安は小さくはなかっただろう。それでも、長谷川は折れなかった。

練習復帰から1週間で2軍戦に出場し、9月末に1軍に昇格。そのときの「今までしっかり練習を積んできたので。やってきた練習量は自信になってるので」というコメントを見て、思い出した。長谷川は春季キャンプで、全体練習後は毎日のように1000球近いティー打撃で自らを追い込む。その真意を「技術的なことより、精神的な強さだね。この年になると、あと何年できるかな、とか考える。もういいかな、とチラッと感じることもある。そこでまだ踏みとどまれるメンタルを作れる」と話していた。強いはずだ。

今季は長谷川にとって5年ぶり開幕スタメンをつかみ、古傷の足首にも不安がないと自信を持って臨んでいた「勝負の年」だ。シーズン最終盤の優勝争い。誰もがあきらめたくなるような苦境も乗り越えてきた打撃職人の力が、チームを救うと信じている。【ソフトバンク担当=山本大地】