三重県伊賀市の鉄工所「福森工作所」の3代目社長・福森正和さんは4年前、父の急逝で突然、後を継ぎました。専業農家から異業種への転身でしたが、スキルを磨き、時に失敗しながらも従業員との関係づくりに腐心。大型工事に関わるなど事業を成長させています。
家業を継ぐ気はなく、専業農家に
福森工作所は1965年、福森さんの祖父で現会長の登さんが鉄工所として創業しました。2000年から先代で父の啓恭さんが社長となり、県内外の鋼構造物を手掛ける(鉄骨を加工して建築する)会社に成長しました。 しかし、福森さんは「子どもの頃、父はまったく家にいなかったから会話もなく、正直、どんな仕事をしているのかも分かっていませんでした。後を継げと言われたことも一度もありません」と振り返ります。 進路を考える時、家業を継ぐことは頭にありませんでした。「祖父は兼業農家として米も作っていて、僕も小さな時から手伝っていました。農業に興味がわきました」。塾講師の傍ら、兼業で米や野菜を作っていましたが、農業を極めようと、30歳のときに専業農家になりました。
「使命感」で家業に転身
最初は農協などに出荷するだけでしたが、地元イベントへの出店で対面販売を経験。「栽培のこだわり、野菜の旬、美味しい食べ方などを伝える楽しさ、お客さんに直接感想を聞ける喜びを感じました」。そんな経験から自分の店を持ちたいという夢を描き、専業農家になって5年目、育てた野菜や加工品を扱う直営店を伊賀市内の駅前商店街に開きました。 客足は順調で地元レストランとの取引も増え、野菜の個人宅配も思い描いていました。「好きな仕事を妻と一緒に自分のペースででき、毎日充実していました」。しかし、オープンから1カ月後、運命は一変します。 父が胃がんを患って入院し、急逝したのです。享年63歳でした。「まさか、という感じでした。入院してすぐに亡くなると思わず、会社云々以前に、普通の会話も出来ていませんでした」 その年の秋には福森工作所3代目社長に就任。農業、直営店、社長業の3足のわらじを履くことになりました。創業者の祖父に「やってくれないか」と言われたことは覚えていますが、「考える余裕もなかった。長男の自分がやるしかないという使命感からでした」と振り返ります。
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November 29, 2020 at 06:32AM
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