
白石和之
【新潟】使う人のためにベストを尽くす。
打ち棒で、奈良県から取り寄せたヒノキの曲げ輪をたたくと、曲げ輪に挟んだ真鍮(しんちゅう)の網が張り詰めていきキンキンという甲高い音を立て始める。
「ふるいの網の張り具合は、音で分かるんです」
江戸時代後期の1800年代から長岡市寺泊山田で営むふるい屋、「足立茂久商店」の11代目。
薄板で作る曲げ輪、張る網、曲げ輪の留め具は別々の職人が作る。それらを仕入れ、「ふるい」や「せいろ」、食材を滑らかにする「裏ごし」などの製品に仕上げるのが、ふるい屋の曲げ物職人だ。
昔、農家は米を分類するのに4種類のふるいを使ったが、機械化で不要になった。江戸末期に集落に約30人いたふるい屋は次々とやめていったが、村上や新発田の料理店、和菓子店で使われるプロ仕様の裏ごしやせいろを作り出す技術で生き抜いてきた。
師匠だった父が2009年に他界して県内唯一の職人になった後も、「傷み具合を見て、どう使っているかを考え、直し方を工夫する。それができて一人前」という父の教えを守り、修理を大切にする。だが、コロナ禍でそれも減った。「店を閉めた料理屋さんもあるようだ」と気をもむ。
最上の裏ごしに張る馬毛の網、せいろの曲げ輪に最適な唐檜(とうひ)の柾目(まさめ)、熱や腐食に強い留め具用の桜皮。上質な材料が手に入りにくくもなっている。「それでも使う人のためにベストを尽くすのが職人」と前を向く。(白石和之)
からの記事と詳細 ( 越佐ひと 県内唯一の曲げ物職人 足立照久さん(47) - 朝日新聞デジタル )
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