大森由紀子のスイーツの世界
天才職人の菓子改革
フランス革命後に、それまで宮廷お抱えだったパティシエが町に出てお店を開いたことで、今まで知られていなかったお菓子が世の中に出回っていきました。 その潮流に続いて現れたある天才菓子職人が、フランス菓子をさらなる高みに導いていきました。アントナン・カレーム。くしくも革命の直前、1784年に生まれ、貧しさゆえ10歳で親に捨てられてしまいますが、食堂で下働きをした後、運良くバイィという一流菓子店で働くようになってから頭角を現していきます。
カレームは建築に興味を持ち、仕事をしながら図書館に通って建築学を勉強したといわれています。当時この店に出入りしていたタレーランという政治家がカレームの才能を見いだし、数々の重要な晩餐会(ばんさんかい)にパティシエとして起用。その流れでロシア皇帝、イギリス皇太子、ロスチャイルド家などのお抱えパティシエにまで上り詰めました。彼はお菓子も外交手段の一つとし、来賓をいかに創作菓子で喜ばせるかに心を砕いたのです。カレームがもたらした菓子改革は数知れず、例えば、それまでスプーンですくって焼いていた生地を絞り袋で絞るなど、新たな菓子作りを行い、シャルロットやクロカンブッシュといったお菓子を生み出します。後者はシューを高く積み上げるもので、フランス人が今でもウエディングケーキとして注文します。
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おおもり・ゆきこ フランス菓子・料理研究家。「スイーツ甲子園」(主催・産経新聞社、特別協賛・貝印)アドバイザー
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