新潟県佐渡島に約1700種類自生するとされる野草や樹木を使った、クラフトコーラやジンジャーエールが評判だ。暖流と寒流の影響でミカンもリンゴも生産できる多様な植生のおかげで、スパイスの代替となるものはほぼ自給できる。提供する佐渡市の「おにCafe」店主・井上ゆかりさん（53）は「高価な材料を使わなくても昔から日常的にあるものを残すきっかけにしたい」と話す。（立石寧彦）
島の高齢者から特徴聞き取り
佐渡にはタヌキより大型の野生動物がいないため、植生の多様性が保たれているとされる。 佐渡の野草研究家として活動する菊池はるみさん（41）は、2012年ごろから体調管理のためハーブに興味を持ち、西洋と日本の植物の違いに着目した。図書館で佐渡の野草がどう使われていたか記した本を見つけ、実際に現地で探し始めた。 野草の使い方を知る高齢者と話すため、デイサービスで働いた。クロモジは「もんじゃ」などと、植物の呼び方が地域によって違うため、話を聞いては地道に場所を確認。菓子の専門学校で学び、製菓店で働いた経験を生かし、活用法を探った。
研究家とカフェ店主、試行錯誤
菊池さんが作った野草のケーキを食べた井上さんが「佐渡の野草で個性的なメニューを作りたい」と相談。菊池さんと井上さんが試行錯誤し、スパイスと香りが近い野草を使って18年に開発したのが「おにコーラ」だ。 シナモンの香りがするヤブニッケイの葉、同じクスノキ科でスパイシーなオオバクロモジ、甘いアーモンドに似た匂いのクルマバソウなどを使った。コーラの風味を出すスパイスのクローブだけは、島内で代わりとなるものが見つかっていない。だが、レモンと砂糖を加えて煮詰めたシロップを炭酸水で割ると、まさにコーラの味わいだ。 アカメガシワやアカマツ、時期によっては島内で収穫できるレモンやショウガを使った「おにエール」もある。「おにコーラ」は手軽に家で再現できるキットを販売する。 カフェの店名には、佐渡の伝統芸能で120以上の団体がある鬼太鼓への思いが高じて「おに」を冠した。店内は写真や資料を配置し、島の文化を発信する。 菊池さんの活動の幅は広がりを見せる。学生やイベント参加者を対象にした、野草コーラや飲料作りの教室が人気だ。菊池さんは「若者や子どもに島の植物へ興味を持ってもらいたい」と語る。
日本農業新聞
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