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Saturday, December 25, 2021

東京はクラフトビールの都 醸造所数が日本一 首都酔わす個性の一杯続々<まちビズ最前線> - 東京新聞

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併設する醸造所で作ったビールを提供する後藤健朗さん(左)と妻の由紀子さん=世田谷区で

併設する醸造所で作ったビールを提供する後藤健朗さん(左)と妻の由紀子さん=世田谷区で

 街角で見かけることが多くなった手作りのクラフトビール(地ビール)を楽しめるバー。出来たてをすぐ飲める醸造所併設型の店も増えている。実は近年、東京ではクラフトビール醸造所が急増し、その数は神奈川を抜いて日本一に。都内の醸造所を歩き、その魅力を探った。(岸本拓也)

◆季節や気温で味変わる醸造の奥深さ

併設する醸造所で作った生ビールを注ぐ後藤健朗さん(左)と妻の由紀子さん=世田谷区で

併設する醸造所で作った生ビールを注ぐ後藤健朗さん(左)と妻の由紀子さん=世田谷区で

 グラスに注がれた黄金色の液体に、ふんわりとした純白の泡。一口飲むと、苦味が少し口に広がり、ほのかに柑橘系の香りが鼻に抜けた。

 小田急線経堂駅そばの後藤醸造(世田谷区)の定番クラフトビール「経堂エール」が目指したのは「最初から最後まで飲みやすい」一杯だ。

 後藤健朗さん(37)、由紀子さん(34)夫妻が2016年、学生時代を過ごした東京農業大の近くに店を構えた。15席ほどの立ち飲みバーが併設され、店内からガラス越しに醸造タンクが見える。「ビール工場」を眺めながらビールグラスを傾ける客も多いという。

 旅行先の山梨県で飲んだ「アウトサイダーブルーイング」のクラフトビールのおいしさに感動し、当時務めていた食肉卸会社を退職してビール造りの世界に飛び込んだ健朗さん。元々、物づくりが好きだったこともあり、季節や気温、モルトやホップなどの材料を入れるタイミングで味が変わるビール造りの奥深さにのめり込んだ。

 現在は定番の経堂エールのほか、地元産のすだちやかぼすを材料に使うなど、多様なビールを手掛ける。健朗さんは「バーで直接お客さんの感想を聞けて、ビール造りのヒントがもらえる」と語る。

自家製のクラフトビールを紹介するアンドビールの安藤祐理子さん=杉並区で

自家製のクラフトビールを紹介するアンドビールの安藤祐理子さん=杉並区で

◆「組み合わせ無限、人生懸けても飽きない」

 「季節感を大事にしたビールを手掛けたい」と語るのは、JR高円寺駅近くのアンドビール(杉並区)を営む安藤祐理子さん(32)。

 店近接の醸造所で作った白ワイン用のブドウを使ったフルーツビール「甲州サワー」がこの冬のお勧め。果汁の甘みが口に広がり、ビールというより甘いジュースを飲んでいるようだ。料理担当で夫の耕史さん(31)が作る本格カレーと食べても「負けない味」を心掛けているという。

自家製のクラフトビールを注ぐアンドビールの安藤祐理子さん=杉並区で

自家製のクラフトビールを注ぐアンドビールの安藤祐理子さん=杉並区で

 祐理子さんもクラフトビール造りに魅力された脱サラ組。17年に大手IT企業から転身し、ほぼ独学でビール造りを学んだ。フルーツやヒノキ、スパイスなど時季で気になる材料を使い、あえて「定番」は作らない。店には毎回異なる8種類のクラフトビールが並ぶ。祐理子さんは「組み合わせが無限で、人生を懸けて取り組んでも飽きない」と醸造を楽しむ。

 地ビールは1994年の酒税法改正で最低製造量が引き下げられ、町おこしの起爆剤にと地方で新規参入が相次いだ。しかし、低品質の商品も出回るなどで消費者離れを招き、多くの醸造所が廃業に追い込まれた。

 その後、2010年代前半から米国のクラフトビールブームを追い風に、日本でも若者を中心に人気が再燃した。全国地ビール醸造者協議会(JBA)によると、このころから、地ビールはクラフトビールと呼ばれることが一般的になったという。

◆商圏大きい東京「挑戦する気概持つ造り手多い」

 特に東京の躍進は目覚ましい。酒類容器を製造するきた産業(大阪)の集計では、東京の醸造所数は15年に全国首位となり、今年9月末時点で73カ所と、2位の神奈川(36カ所)を引き離す。

 JBAの石川智康理事は「消費者の好みが多様化し、特に商圏の大きい東京で個性派ビールが支持されている」と分析。きた産業の喜多郁森営業部長は「新しいことに挑戦する気概を持って開業する造り手が多い」と話す。

 新型コロナウイルス禍で、各地のクラフトビールを楽しめるビアフェスが開けないなど、業界には逆風もあったが、石川さんは「無限の可能性があるクラフトビールは新しい文化として築かれつつある」とさらなる発展に期待を込める。

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