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Saturday, January 8, 2022

北斎の「赤富士」再現 絞り染め絶やさぬ職人の心意気 - 朝日新聞デジタル

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権敬淑

 「赤富士」で知られる葛飾北斎浮世絵の名作を、京都の絞り染め職人らが再現し、巨大な几帳(きちょう、和風のついたて)に仕上げた。コロナ禍でも伝統の技を絶やすまいという心意気の集大成は、京都絞り工芸館(京都市中京区)で披露されている。

 北斎の赤富士(作品名「凱風快晴」)は、代表作「富嶽三十六景」の一場面。雄大な富士山の姿をとらえた傑作とされ、開運や商売繁盛などの縁起物としても親しまれている。

 几帳製作は、コロナ禍で絞り染めの仕事が激減する中、伝統の技を途絶えさせまいと同工芸館が呼びかけ、「京都絞り染め振興協会」と「京都絞栄会」の協力で実現した。大波の向こうに富士が見える北斎の「神奈川沖浪裏」を2021年秋に再現したのに続いて、2度目の挑戦だ。

 絹地は特注した幅の広い丹後ちりめん6枚。約30人が、絞り、染め、仕上げなど22の工程を分業し、1年半かけて幅6・5メートル、高さ3メートルの几帳にした。赤い山肌、白い雪、青い空、たなびく雲などの質感を表現するため、桶(おけ)絞りや針疋田(はりびった)絞りなど多くの伝統技法を駆使した。近づくと、絞りの独特の風合いと手仕事の細やかさが見て取れる。

 「今が最後のチャンスだと思ったんです」と館長の吉岡健治さん(80)。

 吉岡さんによると、「絞り染め」は欧米でも日本語のままで通用するほど人気。だが現在、京都の職人の多くは70代以上で高齢化と後継者不足が課題だ。そこにコロナ禍が追い打ちをかけている。「言葉や映像だけはダメで、現物を作らないと次に送れない技術があります。仕事の発注で、職人の生活を支える意味もありました」

 日々の仕事が減った今だからこその利点もあったという。息子で副館長の信昌さん(53)は「皆さんがプライドをかけて向き合い、納得するまで次の工程に渡さない。なんとか新春に間に合いました」と笑う。

 展示は5月5日まで。会場では製作過程を紹介する動画や、「富嶽三十六景」に追加された「裏富士十景」の額装作品も展示する。赤富士に登る様子を合成写真にする無料サービスも。入館料は大人800円。問い合わせは同工芸館(075・221・4252)へ。(権敬淑)

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