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Tuesday, September 1, 2020

産廃予定の酒粕を再利用、クラフトジン「LAST」発売/エシカル・スピリッツ - 食品産業新聞社

エシカル・スピリッツ「LAST EPISODE 0 -ELEGANT-」「LAST EPISODE 0 -MODEST-」

エシカル・スピリッツ「LAST EPISODE 0 -ELEGANT-」「LAST EPISODE 0 -MODEST-」

クラフトジンがブームになって久しいが、産業廃棄物となる予定の素材を再利用したジンは世界でも初の試みではないか。

エシカル・スピリッツが今年3月にリリースしたクラフトジン「LAST」のベースは、酒粕を蒸留したスピリッツだ。いわば「粕取り焼酎」だが、同社ではさらなる付加価値を考え、グローバルで伸長を続けるジンカテゴリーに着目。酒粕由来のまろやかなスピリッツに新たなフレーバーを加え、世界でただひとつの個性的な味わいに仕上げた。さらに、同ジンの利益の一部で酒米を購入し、酒粕の提供元に送り返すことで、ビジネスを循環させる。まさに「エシカル」なプロジェクトだ。

※エシカル=地球環境、地域・社会に配慮した考え方や行動

同社の共同発起人のひとり山本祐也氏は2015年、日本酒の未来を世界に広げるベンチャー「未来酒店」を創業。中小の蔵を回る中、日本酒造りの工程で、酒米の重量の約3割が酒粕となること、そしてその多くが廃棄されることを知った。

エシカル・スピリッツ 山本氏

エシカル・スピリッツ 山本氏

 
酒粕は本来日本酒の一部であり、廃棄に抵抗を感じる酒蔵は多いが、再利用しようにも用途は少なく、酒粕として流通させられる蔵はわずかだ。でも、資源として再活用すれば、酒蔵の課題を解消し、その利益を循環させることで、日本の農業も支援できる。
 
もちろん、味わいにも妥協はない。「エシカルということだけを価値にしたくない。エシカルゆえに、おいしくなくては」と考えるからだ。ジンの個性はボタニカルにあると思われがちだが、ベーススピリッツにこだわることで、「LASTにしか出せない味わい」が生まれる。
 
ベースとボタニカルそれぞれの個性を活かしつつ、着地点を決めるのは相当にチャレンジングだったと思うが、5人の共同発起人のひとりで、クラフト蒸留所や蔵で研鑽を積んだ山口歩夢氏が細やかにレシピをチューンナップし、「エシカルだからおいしい」ジンに仕上げた。
 
商品名の「LAST」には、酒造りの「最後」に生まれる酒粕と、命を「存続する」という2つの意味を掛けた。今春、「エピソード0」として、長野「真澄」の酒粕を鳥取「千代むすび」で蒸留した「MODEST」と「ELEGANT」の2品(共に200ml/2,000円、375ml/3,000円、ともに税別)をリリースし、自社サイトなどで展開する。秋以降は卸を通して全国で展開を開始する予定だ。
  
◆エシカル・スピリッツ
https://shop.ethicalspirits.jp/

 
「MODEST」は、キーボタニカルのジンジャーがさわやかに香り、ハイボールにすると米由来の優しい甘さが際立つ。一方、「ELEGANT」は、イングリッシュガーデンを思わせるフローラルなトップノートから、口に含むとエキゾチックでスパイシーな味わいが万華鏡のように重なる。エシカルという付加価値以上に、ジンとしての完成度に驚いた。
 
〈「エシカルだからおいしい」から広がるエピソード〉
今後は、中小蔵への対応も進めるのかを尋ねたところ、「年内には、東京・蔵前に自社蒸留所をオープンし、持ち込みを受け付ける予定だ」という。さらに「蒸留所の屋上でボタニカルを栽培し、Made in東京のスピリッツを造りたい」と夢は広がる。なるほど、だから「エピソード0」だったのか。
 
唯一無二の味わいを持つ「クラフトジン」に、「エシカル」という価値観の訴求力。東京から世界へ、「エピソード」の舞台は広がっていく。
 
〈食品産業新聞 2020年8月27日付より〉

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