ダム建設を進めてきた国土交通省の元官僚が、桶(おけ)づくりの職人に転身した。森を切り開いてきた立場から一転、木のぬくもりに魅せられ、「ダムだけに頼っては人の命を守れない」と訴え続けている。
近畿地方整備局の河川部長や本省の防災課長を務めた京都市下京区の宮本博司さん(68)。2006年に早期退職し、実家の梱包(こんぽう)資材業を継いだ。
翌年から木の桶づくりを始めて15年。会社の隣に建てた小さな工房で、早朝や週末に木と向き合う。木肌にかんなをかける手つきは慣れたものだ。
「ダムと桶。思えば、水をためるものをずっとつくり続けてるんだなって」
官僚時代、苫田ダム(岡山県)や長良川河口堰(かこうぜき)(三重県)の現地所長を務めるなど、多くのダム計画に関わってきた。水没地区の住民は移住を強いられ、計画への賛成派と反対派に分断された。それぞれに悩み苦しむ姿を見て「このままダムをつくり続けていいのか」との思いが募った。
転機になったのは、河川整備…
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